16日の朝は、アイに起こされました。三着の民族衣装以外に、アイとお揃いで赤の豪華な民族衣装をオーダーしていたのですが、それが今朝早く届いたようで、早速アイが自分の衣装に袖を通しています。お揃いの衣装姿でレストランで朝食を食べていると、日本人観光客たちから一緒に写真に写って欲しいと、片言の英語でリクエストされました。彼らは私たちを現地人だと思っていたようで、私が日本語で返事すると、驚いていました。
鏡で確認すると、確かにとてもよく似合っています。
この衣装は、濡れたら傷むと注意されていたので、ホテルの中だけで着用するつもりでいました。しかし、アイが「このままのお揃いの衣装で、ホテイチ君に会いに行きたい。」と言いだしました。「濡らしてはいけない衣装を濡らしてしまうかもしれない」というハラハラドキドキのシチュエーションが、私は大好きです。私に異論などありません。アイの希望どおり、豪華な衣装で外出することに決定しました。アイに「下は水着なの?」と尋ねると、「ううん。」と答えながら下着を見せてくれました。勝負下着かもしれません。アイの気合いの大きさを感じました。
ホテイチ君のホテルに着くと、まっすぐフロントに向かいました。ホテイチ君は、さすがにぱりっと制服を着こなしていました。ホテイチ君に「あなたたちと一緒に遊びたい。どうすればいい?」と英語で尋ねると、「僕は今日は勤務中なので、遊べない。でも、プールを貸し切りで借りてくれたら、僕も仕事の一環としてサービスします。」と予想どおりの答えでした。「じゃあ、1時間貸し切りにします。」と返事すると、驚いたことに料金が昨日聞いた額の2倍とのことです。
理由を尋ねると、昨日は夏が好きさんがいたので宿泊者料金で説明したとのこと。夏が好きさんがチェックアウトした後なので、ビジター料金で2倍になるとの説明です。アイは2倍の料金でも遊んでいきたいようでしたが、持ち合わせのお金が底をついて、チップも渡せなくなるし、私たちのホテルまで歩いて帰らねばなりません。「30分で半額」という条件を提示して交渉しましたが、料金でどうしても歩み寄れず、やむなく断念しました。
「この後どうしよう?」と2人で相談しましたが、アイも“濡らされるかもしれない状況”にゾクゾク興奮するようです。このままの姿で、カオサン通りに出かけました。トゥクトゥクで街を走ると、子供たちはまだ水鉄砲を構えています。子供たちも、私たちの着ている衣装が高価だと理解しているようで、ほとんど水をかけてきません。カオサン通り周辺も、ソンクラーン期間中ほどには混雑していませんでした。街路のあちこちで子供たちやファランが水鉄砲を抱えていて、時々戦闘(水のかけあい)が勃発します。
しかし、水をかけられたくない人たちも存在します。水かけ部隊の人たちも、無用なトラブルを避けるために、人を見かけで判断し、私たちのような濡らしてはいけない衣装を着ている人に対してはほとんど攻撃してきません。私たちは、無事に濡れることなく、カオサン通りに到着しました。カオサン通りが見渡せるカフェで、昼食を摂りました。濡れたくないのに、水をかけられて怒っている人たちを、時々見かけます。口論だけですまずに、取っ組み合いの大喧嘩にまで発展したケースもありました。
シルク製のような薄い生地の白のお洒落なワンピースを着た、お人形のように上品な凛とした表情の金髪美人が通りを歩いてきたので、アイと2人で思わず注目していると、子供たちどうしの水かけバトルに巻きこまれて、左肩から腕にかけて少し濡れました。濡れた部分のワンピースが肌に貼り付き、下着の肩紐の白さがくっきりと浮き上がりました。彼女が5mほど前進した時に、彼女の左側にいたファラン男性(白人男性)が、彼女の胸に水鉄砲で攻撃しました。彼には、彼女が濡れたままで平気で歩いているように見えたのかもしれません…。これで彼女のワンピースの胸の部分が濡れてスケスケになってしまいました。
下着も薄い素材のようで、肌の色まで透けているようです。彼女は“No!”と首を大きく振って足早に通り過ぎようとしましたが、他のファラン男性たちから格好の標的にされて、あっという間にずぶ濡れになってしまいました。お洒落な雰囲気をたたえた上品な白のワンピースが、ずぶ濡れになってスケスケになってしまいました。スケスケになって、上品さが吹っ飛んでしまいました。かわいそうなことに、彼女は露出狂のような姿になって、泣きながら走り去っていきました。
周囲の男性たちは、彼女のセクシーな姿に目がクギヅケになっていました。最初に子供たちの水かけバトルに巻きこまれたりしなければ、彼女はスケスケになどならなかったと思います。私の実験では、素材がナイロンやポリエステルの衣装は濡れたら透けます。特に白色系の衣装は、スケスケになってしまいます。女性の皆さんは、どうぞご注意ください。他にも、スーツ姿の若い女性や出前を配達中のウェイトレスが、水をかけられて怒っていました。そういった喧騒の世界を眺めながら、のんびりと食事するのも、楽しい時間の過ごし方でした。
食後、カオサン通りを端から端まで歩きました。通りの真ん中辺りのセブンイレブンの前には、今日も“50才くらいのテツロウ様の影武者さん”がいました。私を見つけて「おお、おお。」と手招きして、呼び寄せてくれました。「お嬢さんたち、その衣装は濡れたらダメになるよ。ファランには、十分気をつけてね。」と言いながら、店の中からイチゴヨーグルトドリンクとオレンジジュースを持って来て、私たちにご馳走してくれました。彼は、セブンイレブンの店主のようです。
私が飲み切れずに少し残したヨーグルトドリンクの瓶を、大事そうに店の奥の冷蔵庫に入れていました。彼は「もう1本飲むかい?」と親切に言ってくれますが、私はもうこれ以上飲めません(笑)「近くに来る時は、必ず立ち寄ってよ。ドリンクご馳走するから…。」と親切に言ってくれました。10年後でも、ご馳走してくれるかな?
水をかけようとする人に対して、私は今日一度も拒否しませんでしたが、長いカオサン通りで3回ほどしか水をかけられませんでした。すべてファラン男性からですが、正面からではなくて、通り過ぎた後に背中に少量の水をかけられただけです。暑かったために、すぐに乾きました。民主記念塔の近くまで歩いて、トゥクトゥクに乗ってホテルへ戻りました。帰りのトゥクトゥクに乗車中、地元の青年に道端から水を一度だけかけられました。
彼は私たちの衣装に気づくと、頭を下げてワイ(合掌)しました。
謝っているようにも、見えました。
ホテルに到着した時には、衣装は完全に乾いていました。
部屋に帰り汚れをチェックしましたが、まったく問題ありませんでした。
ソンクラ―ンが明けたのだと、実感しました。
(完)
文章提供 投手ミナ 編集 テツロウ
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