ソンクラーン ミナンクラーン 冒険編 その20

ミナ
冒険編
その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10
その11 その12 その13 その14 その15 その16 その17 その18 その19 その20
その21 最終回
番外 ソンクラーン美術館 予行演習 本編
ユキの国内
ずぶ濡れ修行
着衣泳T 着衣泳U 着衣泳V
幼稚園
阿波
ゾーブ遊び
主な登場人物

私--元ソフトボール女性投手ミナ
 父の転勤で転校を繰り返したために、たくさんの種類の高校時代の制服を保有している。民族衣装のプリンセス。水かけ天使。

若者たち---ミナに魅せられた人々。走り去ろうとする三輪のトゥクトゥクにみんなでしがみついて、後退させるという、むやみやたらと面白い自然発生した遊びを続ける。出会いは一期一会、もう2度と出会えない。

タキシード男性---金髪で長身の白人男性。妙な遊びを目撃してしまい、白人と東洋系の美女2人をともなって、リムジンから降りてくる。
夏が好き---40代日本人カメラマン。大阪在住。ミナさんとともにトゥクトゥクに同乗。

さあ、トゥクトゥクを探します。英語が通じる運転手を探しました。パッポン周辺の繁華街を低速で走行するように、お願いしました。タイも日本と同様、車は左側通行です。歩道から水をかけられやすい左側の座席に座りました。しばらく歩いたので、硬い座席でも座るとホッとします。トゥクトゥクは、シーロム通りからタニヤ通りへと左折しました。タニヤ通りは深夜になっても渋滞していて、前に進めません。歩道の若者たちがトゥクトゥクの周りに集まってきて、私に水をかけながら、タイ語で話しかけてきます。

私がピンクの民族衣装を着ているので、地元の人に見えるのでしょう。皆が一生懸命にゆっくりと話しかけてくれるのですが、私は全然理解できません。“Sorry,I can not understand.I am JAPANESE.”と答えました。すると、若者たちは「信じられなーい。」といった表情で、顔を見合わせてびっくりしています。若者たちが私たちを見つめながら、何かしゃべっています。人がどんどん集まってきました。前の車が進んだのに、私たちのトゥクトゥクは進めません。

ピンクの民族衣装の私とビデオカメラを抱えた中年男性(夏が好き氏)の組み合わせに興味があるのでしょう。若者たちはお互いに押し合いへし合いで、私に水をかけたり白い粉を塗ってきますが、私に対しては好意的で遠慮がちな感じで、恐怖などは感じません。私は顔を大きく動かさないように注意しました。それさえ注意すれば、白い粉は、頬や顎の先にしか塗られません。額や頭に塗られなければ、粉が目に入らず、目を開けていられます。




周囲の若者たちの喧騒を眺める余裕がありました。若者たちと目が合えば、微笑んだり、ワイ(合掌)したり、頷いたり、小首をかしげたりしました。小首をかしげるポーズの受けが良く、悪乗りしてぶりっ子したら、若者たちはさらに大喜びでした。長く感じましたが、実際にはその地点に3分ほど止まっていたのでしょうか?運転手が警笛を鳴らすと、やっと若者たちは道を空けてくれました。トゥクトゥクが動き出すと、周囲の観衆が手を振りました。


私が微笑みながら手を振って応えると、歓声が上がりました。


トゥクトゥクは20mほど進むと、横断歩道の手前で道路に減速用の段差(凸状になっている道路上の突起、暴走防止用だと思います。)があるため、スピードを落としました。すると再び、若者たちに取り囲まれてしまいました。トゥクトゥクが凸段差を乗り越えようとすると、若者たちがトゥクトゥクにしがみついて、後ろへ引っ張ります。トゥクトゥクは苦しそうなエンジン音をたてながら、一生懸命に前進しようと試みますが、凸段差を乗り越えることができずに後退しました。阻止に成功した若者たちは、トゥクトゥクから手を放して大喜びしています。

再びトゥクトゥクが前進しようとすると、若者たちは再び阻止します。若者たちは、こういった意味のない行為を一生懸命に楽しんでいます。若者たちは次々とメンバーを入れ替えて「阻止ごっこ」を続けます。阻止メンバーが、全員女の子に交代しました。凸段差を乗り越えるチャンスだと思いましたが、運転手はアクセルを全開にしなかったようで、トゥクトゥクは再び後退しました。運転手もグルになって、遊んでいたのでした。その間も、私は水と粉の洗礼を浴び続けていました。

1〜2分経過した頃、トゥクトゥクの真横の対向車線に白いリムジンが停車しました。

窓ガラスが白い粉で汚されているため中は見えませんが、街のバカ騒ぎに不釣合いな高級車です。




周囲の若者たちも、何が起こるのかと注目しました。運転手がわざわざ降りてきて、後部座席のドアを開けました。リムジンから降りてきたのは、40才くらいの白のタキシード姿で、イケメンの長身金髪白人男性でした。続いて、レースやヒダヒダをたっぷり使った豪華なイブニングドレス姿の美女が2人降りてきました。1人は真っ赤なドレスを着た金髪の白人で、もう1人はピンクのドレスを着た茶髪の東洋系でした。場違いな衣装での美男美女の登場に、周囲の若者たちも呆然と見詰めています。タキシード男性は2人の美女を伴って、ゆっくりと歩き出しました。

周囲を取り囲む若者たちも、誰一人水をかけずに、圧倒されたように後ずさりして通路を空けます。「彼らはどこへ行くのか? この後どうなるのか?」と私も興味深々見詰めていると、タキシード男性は私たちの方へ近づいてきました。「私を迎えに来たのかな?」と思って、少しドキドキ緊張しました。タキシード男性は、私の乗っているトゥクトゥクの車体後部の鉄パイプの柱を両手で握ると、楽しそうに揺すり始めました。タキシード男性は、2人の美女にも揺することを勧め、手振り身振りで運転手に前進を命じました。

運転手がアクセルを踏みこむと、真っ黒の排気ガスがタキシード男性を直撃して、ズボンの右膝部分が少し黒く汚れました。タキシード男性は汚れを気にしないで、トゥクトゥクを引っ張って揺らして遊んでいます。それまで様子を見ていた地元の女性が、突然白い粉をタキシード男性の頬にベターッと塗りました。「怒るかな?」と思いましたが、タキシード男性は笑顔のままでした。2人の美女も大笑いです。

その笑顔をきっかけに地元の若者たちが3人に殺到して、水と粉を浴びせました。あっという間に、3人はずぶ濡れの粉まみれになりました。イブニングドレスのヒダヒダが白い粉まみれに汚れると、ドレスがボロボロに破れているような感じに見えて、2人の美女は「白い土偶のゾンビ」という表現がピッタリの見るも無残な姿に変身しました。

本人たちは、自分の無残な姿はわからずに、それぞれ他の2人の姿を見て笑い転げていました。
しばらくすると、3人は再びリムジンに乗りこんで、走り去りました。
「3人は何者で、何をしたかったのか?あの後、3人はどうしたのか?衣装は、大丈夫だったのか?」と、私はとても興味があります。


 文章提供 投手ミナ                 編集 テツロウ




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