午前11時になりました。テツロウ様が大好き?なコギャルファッションに身を包みました。この学校には一ヶ月しか通っていなかったので、夏服しか持っていません。紺のリボンのついた白のブラウスと緑色のチェックの超ミニです。ブラウスの生地が薄いので、濡れなくても下着が透けてしまいます。透けてはいけないので、紺色のカーデガンを羽織ります。ルーズソックスも履きました。
ホテルの前の歩道では、水かけをしていません。テツロウ様らしき人は現れません。今日は特に暑いので、カーデガンを羽織っているのはつらいです。背中に汗が流れるのがわかります。「早く水をかけてー!」の気分です。暑さが我慢できずに、カーデガンを脱ぎました。アイに確認してもらうと、ブラウスの背中の部分が汗で濡れて、ぴたっと肌に貼りついているそうです。後ろから人に見られないように、植え込みを背にして日陰に座りこみました。ミニスカートなので、足元にも注意します。濡れたら透けてしまうので、水かけにも注意しなければなりません。
アイは民族衣装のままなので、そういった注意をする必要もなく、リラックスしているようでしたが、突然「ホテイチ君が好きになっちゃった。プールでホテイチ君がミナの方ばかり見ていたので諦めていたけど、やっぱり一緒に遊びたい。ホテイチ君に連絡して、もう1人イケメン君を呼んでもらい、2対2で遊びに行かない?」と急に言い出しました。
「アイは、ホテイチ君たちとどんな種類の遊びをしてみたいの?」と私は尋ねました。
「カラオケかな?ショッピングかな?自分でも何をしたいかよくわからないけど、ホテイチ君たちに『遊びに連れていって』と頼めば、楽しく遊べるんじゃない?ミナはトゥクトゥクに乗って大騒ぎしながら、水をかけられるのが好きでしょう。そういった遊びでもいいよ。」とアイは私を誘います。
「先ほどのプールサイドで『ホテイチ君が好き』となぜ私に言わなかったの?もう遅いよ。ホテイチ君は勤務明けなので、今はホテルに行ってもいないよ。」と返事しました。アイは「夏が好きさんに聞かれたくなかったから、黙っていたの。ミナにプールの端に呼びつけられた時に、アイコンタクト(目配せ)で『私をプールに引きずり込んで』とミナに伝えたの。私が『さあ、コレから』と思っていたら、突然ミナが帰り支度を始めたのよ。ミナは自分勝手なんだからあ…。今からもう一度、一緒にホテルへ行って、ホテイチ君を呼び出してもらわない?」と誘います。
私は「アイがプールに入りたかったら、自分でも入れたじゃない。『プールに引っ張り込んで』とアイに頼まれたら、喜んでアイを引っ張り込んだよ。周りはタイ人なのだから、日本語で堂々としゃべれば良かったのに…。
私が帰り支度を始めても、アイが帰りたくなかったら「もっとここにいよう」と言えたでしょう。私がホテイチ君を呼び出すのはイヤだなあ。」と答えました。午後2時までは、パンパシ周辺から離れたくなかったのです。
私は「明日、ホテイチ君のホテルのプールをアイが貸し切りにしてみたら…?貸し切っても、ホテイチ君が来てくれるかどうかわからないけど、ホテイチ君をリクエストしてみたらどうかな…?アイ、お金は大丈夫?」と変化球を投げました。アイは「私1人では貸し切りは無理!ヤンさんの世話になるか、私とミナと夏が好きさん3人で割り勘にするか、ミナはどちらがいい?ミナからヤンさんに頼んでくれないかな?」と言います。
「アイが借り切りたいのならば、アイからヤンさんに頼んでよ。3人の割り勘ならば私の分のお金は負担するけど、夏が好きさんに頼むのはアイがしなさいよ。プールの貸し切りが決定した後で、ホテイチ君が参加できないなどの理由で、決まった話をなしにすることはやめてね。」と少し強い口調になってしまいました。
私がヤンさんに頼むと、ヤンさんにまた「借り」ができてしまいます。ヤンさんに強く迫られた時に、拒めなくなってしまいます。夏が好きさんにも、お願いしにくいです。暑さと空腹のため、アイと口喧嘩のようになってしまいました。頭を冷やすために、冷房の良く効いたホテルのレストランでお昼にしました。私は食事中も窓から、ホテル前の歩道の見張りを怠りません。しかし、テツロウ様らしき人物は現れません。
ここで初めて、テツロウ様のことをアイに話しました。さらに「午前11時から午後2時までパンパシ周辺に滞在したい」理由をアイに説明しました。「約束なしで、顔をお互いに知らないテツロウ様と会う」ことに対してアイも興味を示しました。しきりに、窓の下の歩道を覗きこみます。「テツロウ様が来られたら、3人一緒でホテイチ君のホテルへ行く。午後2時まで待ってもテツロウ様が来られなければ、2人でホテイチ君のホテルへ行く。」という約束をアイと交わしました。
ホテルの前の歩道に下りました。舗道からの照り返しもあり、気温は40度を越えているようです。先ほどから、地元の子供たちが水鉄砲を持って歩道をウロウロしているので、カーデガンを脱げません。暑さで、頭がボーっとします。「水をかけて−!」と発狂しそうです。暑さに我慢できず、アイと交代で部屋で涼むことにしました。やっと私が涼む番になり、部屋でカーデガンを脱いで、ベッドに横になりました。
「涼しくて気持ちが良くて、天国だなあ」と感じた瞬間、誰かがドアをドンドン叩きます。チャイムを「ピンポンピンポン」と鳴らします。ドアを開けるとアイでした。「オタク系の人だよう!」とアイは興奮しています。そのまま急いで1階へ下りました。歩道には20代後半くらいの男性が立っています。アイの言うとおりオタク系です。大きなペットボトルを2本抱えています。私が近づくと、彼は「ミナさんですか?」と聞きました。
私が「はい」と頷くと、「僕はテツロウといいます。」と言いながら、いきなりペットボトルの水を私の首筋から上半身にかけてきました。水は適度に生ぬるく、猛暑の中では不快じゃないです。にこっと微笑もうとして、自分の姿に気付いてびっくりしました。部屋でカーデガンを脱いだまま、薄い白のブラウス姿で飛び出してきてしまったのです。私は思わず「キャーッ!」と叫んで、胸を押さえてしゃがみこんでしまいました。
テツロウ様は、それでも容赦なく水を首の辺りから注ぎます。私はあっという間に、ずぶ濡れにされてしまいました。私の叫び声を聞いて、周囲に人が集まってきました。すぐに、男性や少年たちに取り囲まれてしまいました。アイに「カーデガンを持ってきて、お願い。」と頼み、隠れる場所を探しました。ちょうどそばにあった植木の後ろに隠れましたが、周囲を完全に包囲されてしまいました。群集は2メートル以内には近づきません。子供たち以外は水をかけてきません。
男性たちは直視こそしないものの、横目で無遠慮な視線を私に突き刺さします。私を取り囲んで横目で見つめている男性たちは、みんな無言で不気味です。私は胸を手と腕で隠していますが、隠せない部分のブラウスは完全に肌に貼りついています。上半身が丸見えで、衣服の意味をなしていません。私は指で胸に貼りついたブラウスを引っ張って、素肌から引き剥がしました。肌とブラウスの間に空間を作って、透けにくいようにしました。胸にできる空間の分、背中や肩や上腕部にはよりピッタリとブラウスが貼りつきますが、仕方がありません。
とても恥ずかしかったです。しばらくして、アイがカーデガンを持ってきてくれました。カーデガンを着て、やっと落ち着きました。水をかけたがる人たちに、微笑みを返すことができるようになりました。かけたいだけ好きなように水をかけさせてあげると、周囲の騒ぎは治まりました。テツロウ様は「ごめんなさい。こんな大騒ぎになるとは思ってもいませんでした。」と謝りました。目の前にいるテツロウ様は、自分の抱いていたイメージとはだいぶ違いますが、これが現実です。現実を受け入れなければなりません。
テツロウ様は、「ミナさんは濡れるのが好きなのですね。聞いていたとおりです。」と喋り始めました。
「先ほど、日本人の友人たちと大声で喋っていたら、2人の美女を連れた日本人男性から『テツロウさんという人いませんか?』と声をかけられました。
『僕がテツロウです。』と答えると、『ミナさんを知っていますか?』と聞かれました。『ミナは、僕の彼女の名前です。』と答えると、『きっとミナさんに会えます。』とここの場所を教えられました。よくわからないまま半信半疑でここにやって来ましたが、来て良かったです。」とのことです。
フルネームを尋ねましたら、オオニシ テツロウさんでした。とんだ人違いでした(笑)
その時、「おーい、ミナさーん!」という聞き覚えのある声が聞こえました。夏が好きさんが、トゥクトゥクに乗って近づいてきます。両側に、地元の美人を座らせています。2人は私服姿ですが、ホテイチ君のホテルの従業員のようです。1人は、制服姿でプールに入った彼女のようです。トゥクトゥクが止まると思っていたら、そのまま通りすぎていきます。
私は「待って−!」と大声で叫びましたが、聞こえなかったようでそのまま走り去っていきました。オオニシさんは「あの男性に声をかけられました。」と言います。犯人は、夏が好きさんでした(笑)善意の結果なのでしょう。仕方がないです。オオニシさんに「わざわざ来ていただいてすみませんが、人違いでした。何か希望がありますか?」と尋ねると、「ミナのカーデガンを脱いだ姿の写真を撮りたい。ミナとツーショットで写真を撮って欲しい。アイとのツーショットも撮って欲しい。ミナとアイに水をかけたい。2人と握手したい。3人で『両手に花』でトゥクトゥクに乗りたい。」とオオニシさんはオドオドしながらも、しっかりと希望を述べました。
オオニシさんの希望どおりに、私にもう一度水をかけさせてあげました。2人で交互に握手してあげました。オオニシさんのカメラで、私とアイ、それぞれとのツーショット写真も撮ってあげました。しかし、アイは水をかけられるのを断りました。私は、カーデガンを脱ぐのを断りました。午後2時をまわりました。とうとう、本物のテツロウ様は現われませんでした。
ちょうど目の前に空車のトゥクトゥクが止まったので、ホテイチ君のホテルまで、オオニシさんに『両手に花』を体験させてあげました。オオニシさんは乗車中、私の胸元とスカートの裾の辺りを気にしていたようです。
ホテイチ君のホテルの前で、私たちは下車して「お気をつけて。」と挨拶しました。オオニシさんは一緒に降りたそうな素振りでしたが、「短い時間だったけど、最高の体験でした。どうもありがとう。2人が写っている写真を送ってあげるよ。」と言ってくれました。私たちは連絡先を書く紙を持っていなかったので、写真は諦めました。「オオニシさんから写真をもらえばよかった」と今、私は後悔しています。
以上 文章提供 投手ミナさん 赤や青などの色づけ 編集 テツロウ
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