アジア一ツ星食堂

麺類 その1

ご飯もの その1 その2 その3 その4 その5
麺類 その2 その3 その4

アジア1ツ星食堂 簡易目次

ごくごく普通のタイ式ヌードル  センレック ナーム 25バーツ

麺類の初めなのでこれ以上の普通はないと言えるオーソドックスな麺を選んでみた。左の麺は具も薬味もスープの色、麺の種類、太さ、味、全てにおいて普通のもの。いやむしろこんなに全て普通である要素が揃っているということは、その時点である意味、珍しいのかも知れない。

麺は白く、日本人が日本国内で通常ほとんど食べる機会はない。ビーフンとよく説明されるが、ちょっとイメージはズレると私は思う。確かに米から出来ているのだが、日本のビーフンにあるようなコシはない。本当にはんなりと柔らかく、ハシで乱暴に扱うとすぐに切れる。

こういった米の麺のそばを、タイで大雑把に総称してクイッティオと呼んでいる。汁があろうが、無かろうが、米が原料の麺であるなら、クイッティオである。一方、日本人におなじみの黄色い麺、つまりラーメンに使われる小麦が原料の麺、こちらはタイではバミーと呼ばれている。

写真はナムプラを使った魚醤油仕立てのスープ、具の丸いものはフィッシュボールで、いわゆる魚つみれ。湯通しした青菜のパックブン(通芯菜または空芯菜)、もやしがのっていて、その上に生のタイネギときつね色に揚げたガーリックチップスが散らしてある。スープは結構コショウが効いている。タイ人はこれは辛さのうちに入らないと言う。そんな彼らは、テーブル上の無料の粉唐辛子をティースプーンに3杯たっぷりとかける。やめてくださいよ。私が辛くなっちゃうじゃないですか。

クイッティオを注文する時、この米の麺には3種類の太さがあるので、どの麺を食べるのか伝える必要がある。もちもちっとした太麺はセンヤイ、そうめん程度の中くらいのはセンレック、糸のようにとはいかぬが、軽い食感のセンミー。太い順にセンヤイ、センレック、センミーという名前がついている。写真はセンレック ナームで中麺の汁そば。ナームは原意は水で、ここでは転じてスープのこと。つまりバミー ナームと言うと、ラーメンになるし、センヤイ ナームと言えば、太麺の汁そばということになる。

ただし言葉が通じるにこしたことは無いが、言葉がわからないと注文できないと考えるのは早計というもの。屋台というのは、ガラスのショーケースなので、客は3種類+黄色麺から食べたい麺を指差しても注文できるし、また例えばの話、一言クイッティオと言えば、たった1人の調理人が外人であるあなたを見て、だいたい気を利かせてごく普通のセンレック ナームを作ってくれるだろう。具にしても何も言わなければ、お任せになって出てくるはずである。

注文は考えている以上に、意外と簡単だ。




パッシーユー (別名パット センヤイ)  日式炒麺 米が原料の幅広麺を炒めたもの 30バーツ

幅広麺のセンヤイは見た目はきしめんに似ている。食感はきしめんより若干柔らかく、もちもちしている。きしめんのようなこしは全く無く、中華鍋でカンカンという音を立てながら料理人が炒めているそばから、ぶちぶちと切れていく。こうして完成した時には、きしめんのコマギレ状態となっている。これは料理人が下手なのではなく、この幅広麺がデリケートなため。

パッカナーという青菜に、ニンジン、ベビーコーン、豚肉、タマゴがパット センヤイの具の定番。ここではそれに加え、キャベツが珍しく入っている。具が隠れて、写真では麺が良く見えない。

パッシーユーは辛味の無い穏やかな味付け。甘口でくどくない。消化が良いので、胃に優しく、食欲のない時などは重宝する。ビタミンの取れる各種野菜もそれなりに入っており、One plate dishとしてとれる栄養バランスは非常に良い。そのためかエネルギー代謝も良く、食べると体の中で良く燃える。どこで注文しても、大抵タマゴが1個入る。

パッシーユーという料理名。タイ人はこの名前を使って注文する人のほうが多い。実際の発音では、パッスィーユーとかパッスィーヒウと聞こえる。日本人には発音が難しく、センヤイ パッド(sen yai pad)で注文するのが、妥当だ。或いはひっくり返して、パッド センヤイとも言う。これなら通じやすい。屋台の前に進んで行って言ったら、あなたは通じるかな?

味は甘口で、あっさりしている。この料理を完全に否定出来る日本人は少数派だろう。その理由はこの料理の名前、パッシーユーに隠れている。正確にはパッド シーユー(pad sii yuu)、パッドが『炒める』 タイ語のシーユーは日本語の醤油がなまったもの。直訳すると、この料理は『醤油炒め』ということになる。我々日本人の口に、タイ料理でありながら奇妙な親和力を感じさせるのは、タイ料理にのべつまくなしに使われるナムプラー(魚醤油)が、実はこのパッシーユーには一滴も全く使用されていないという点に尽きる。要するにこの麺、日本式炒麺なのである。

魚醤油の代わりに使われているのは、大豆醤油。日本で私たちが一般的に醤油と呼んでいるもの。とはいうものの、実際に屋台および食堂で日本の大豆醤油を使うところは皆無。高くて使えない。日本産の大豆醤油にタイ国内で出会える場所は、基本的に日本食料理屋だけと考えたほうが良い。

では、この料理一体どうなっているのかということになるが、種明かしをすると、ほぼ100%の屋台で、中国醤油(タイ国製造)が使われているはずである。1、5リットルくらいの徳用のビン入りが多い。1ビン30円とか50円からあるので、値段は圧倒的に安い。味は日本のもののような深みや繊細さはないものの、それでも大豆醤油には違いなく、余計なもの一切なしの中国らしい単純な味がする。




パッシーユー 日式炒麺 その2  30バーツ

これもパッシーユー。 写真は出前の麺。実はすぐ上のものと左の画像は同じ食堂の出前。煩雑な作業に追われ、時間が無い時や熱などあって寝込んでいる時には最終手段として使い、重宝している。両方ともアパートの私の部屋からアパートの一階の食堂に注文したもの。皿が違うだけで、具が同じなのは、そのため。

大きなアパートには、ランドリー、美容室、食堂などが併設されている所が多く、私のところも1階にある食堂に内線電話で頼む。
 『もしもし。704号室です。パッシーユー1皿。』
すると程なくして、少年や少女が運んで来てくれる。

このアパートの出前は炒飯から汁そば、タイ式サラダ(ナム プリック)、ガイ ヤーン(チキンのあぶりやき、、などなど一通り食べてみたが、いつも何となくまずいのだった。食べられないほどまずくないというポイントがまた非常に始末が悪い点で、毎回テツロウを歯ぎしりさせている。

何と言うか、激怒することのほどではないが、ちょっと文句を言いたくなる内容の料理を毎回出前で出してくるのだった。文句を言う=文句言わない の両者を分かつギリチョンのライン付近に存在する料理を作ってくる。中途半端なグレーゾーンの料理だ。

クレームを出せば、次回からは改善されるだろうか?とも思う一方、必ずしも右肩上がりに味の向上が約束されている訳ではないことも気にはなる。要するに文句をつけた結果、生意気にうるさい奴だと思われ、味が次回からは改悪される可能性もあるのだ。株式市場における株価の値動きのように、私の行動いかんでは、味は上がりもするだろうし、下がりもする。争い事を日本人以上に嫌うタイ人ゆえ、黙っているのがかえって良い場合もある。

ところが、ある日食欲が無く、忙しい時があり、頭にポコンと浮かんだのはパッシーユーだった。今まで良い印象が無かったので、この出前も期待はしていなかった。けれども着いた出前は本当にうまかった。何だ、美味しい料理もあるんじゃないの。これからは出前の時は、パッシーユー専門でいこうと思った。

どうしてアパートの食堂がこうなのかと私自身考えてみたところ、やはりその敷地に一軒しかないアドバンテージをフル活用していることは、想像に難くない。これはお役所式の食堂なのだった。競争が無いから、注文は来る。客はそこの出前を取らざるを得ず、したがって愛想を良くする必要も無い。やる気になれば、この様に美味しい料理も作れるということなのだから、猛省を促したい。

ただし、私はここの中途半端な出前を散々食べてきた。パッシーユーだけは例外的に美味しいので、またいつでも食べたいが、他の料理で次のチャンスが与えられるのが、一体いつになるのか、それは私にもわからないことだ。




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